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指導方針1「文法を学ぶことの重要性」 英語:佐々木洋

文法は文を読み書きする上でのそれぞれの言語における基本ルールです。このルールを無視したのでは様々な文章の内容を正確に読み取ることも、自分の伝えたい内容を相手に分かってもらうこともできません。しかるに近年の「コミュニケーション英語」重視の風潮は文法を厄介なもの、生徒を英語から遠ざけているものとして英語教育の場から排除しようとしている傾向が見受けられます。

例えば現在、一般の高校ではグラマー(文法)の授業は存在せずライティングと呼ばれる文法と作文を足して大幅にうすめたような授業が行われています。準動詞・関係詞・仮定法・比較などはそのほんのさわりだけは教えられていますが、これはあくまでごく一部だけでその全体像が教えられることはありません。

例えば関係詞に関して言えば、関係代名詞・関係副詞のごくごく基本だけはどうにか教えられていますが、補語を受ける関係代名詞 ‘that’や、関係形容詞’what’や’which’、それに複合関係詞・連鎖関係代名詞節などは全く教えられていないのが実状です。

さらに動詞の語法・名詞・冠詞・代名詞・形容詞・副詞・前置詞・特殊構文(否定・倒置・強調・省略・挿入・並列共通関係などの構文)は高校3年間、全く何一つ教えられておりません。それなのに大学入試では例えば

What other school activity cultivates a strong community spirit we do share, helps us learn languages of any kind, increases our mathematical and scientific capacity, and puts us in touch with our musical heritage?

などという文法知識とそれに基づいた文構造把握力なしには絶対に理解できないような文章が下線部訳問題として出題されるのです(某国立大学二次試験、過去問)。

つまりEメール・ブログ・広告文・告知文レベルの平易な文章を読むのならともかく、上のようなある程度以上の抽象的内容、従ってそれなりの語彙、そして長さを持った文章を正確に理解するのにはやはり誰が何と言おうともある程度以上の文法知識とそれに基づいた読解力の訓練が不可欠なのです。

上の文は並列共通関係という文法知識を知っていれば簡単に読み解けます。主語であるWhat other school activity の後にcultivates(V1)…,helps(V2)…, increases(V3)…,and puts(V4)…?というふうに現在形の動詞が4つ並列関係で並んでいるのです。

従って訳は「他のどんな学校活動が・・・を養い,・・・を手助けし,・・・を高め,・・・に触れさせてくれるのだろうか?」といった形になります。果たして文法知識なしでこのような構造が少しばかり複雑な英文を読みこなすことができるでしょうか?答えはお気付きの通りノーです。

<全訳>
「他のどんな学校活動が、我々が確かに共有している強い共同体意識を養い、いかなる類のものであれ言語学習を手助けし、数学的科学的能力を高め、音楽的文化遺産に触れさせてくれるだろうか?」

こんどは次のような短文を見てみましょう。

Many a murderer would have remained innocent had he not possessed a knife or a gun.

一見したところ、文の前後の繋がりが見えませんね。しかし”would have remained”に着目すると・・・文法知識のある人なら気がつくでしょう。これが仮定法過去完了の帰結節の形であることに。

それでは後半の”had he not possessed…”は何なのでしょうか?これもある程度文法を学んだ人なら気がつくはずです。仮定法のif節の倒置による簡略化という現象だということに。つまりこの部分は元々”if he had not possessed…”というif節だったのです。それがifが落ちて”he had”が”had he”に倒置されて、しかも文頭ではなく帰結節の後ろに置かれているのです。そのためにこれが本来仮定法のif節であることに気がつきにくくなっているのです。

仮定法過去完了のif節と帰結節の順番は入れ代わっているとは云え、これで両者がそろったことになります。これを総合すると、仮定法過去完了は過去の事実に反することを「仮想世界のこと」として物語るという性質がありますから、和訳は「多くの殺人者は、もし(その時に)ナイフや銃を持っていなかったとするならば、罪を犯すことなくいられたであろうに」となります。

このようなちょっとした短文を正確に訳す上でも、ましてや500字、700字の長文を精読する上ではなおさらのこと、こうした文法上の知識は不可欠なのです。

ここから結論付けられることは以下のとおりです。不十分な文法知識しか持たずにある程度以上のレベルの英文を読むことでは、文の表層は追っていけるかもしれないが、その文が伝えようとしている真のテーマ、筆者の主張を掴むことはできず、最後まで読み通したが結局何を言っているのだかまったく分からないということになってしまうということです。これでは下線部和訳も含めて設問に正答を出すことはできませんね。

文法を知らずに英文を読んだり聞いたり話したりしようとすることは、例えるならばそのルールを知ることなしにサッカーやラグビーのようなスポーツをやることや、交通法規を知らずに自動車を運転することに等しいのです。重大なミスや事故が避けられないことは言うまでもありません。

私はまずこの文法という、英語という言語の操作マニュアルを君たちに分かりやすく教え、その土台の上に立って徐々に短文から中文、そして長文、超長文へと正確かつ精密に文の構造を解き明かしながら指導してゆくつもりです(ある種の教師たちがよく行っているディスコースマーカーの前後だけを読む中抜き、飛ばし読みは本当の読解力にはつながりませんので却下します)。

そしてどんな英文にでも,その構造には繰り返し登場する一種のパターンがありますので、君たちがある程度長文を読み慣れてきたら、その何度も繰り返されるパターンを数十通りほど表に整理して覚えてもらうことにしようと思っています。その結果として、こうしたパターンが初見の英文中でも浮かび上がって見えて来るようになったらしめたものです。このとき君たちは大抵の英文を何の躊躇もなく、しかもかなりの速度で正確に読めるようになっているはずです。